2020.01.28ゆる日記

彩浜・白浜パンダ一家のルーツ④

2001年、満を持して
永明と梅梅の交配に臨みました。
パンダの発情は春。
交配できるのは1年で3日。
慎重にタイミングを窺います。
しかしこの春、梅梅は発情せず
夏を迎えてから発情が確認されました。

パンダの繁殖は相性がすべてと言われます。
メスはオスを気に入らなかった場合
威嚇することもあるそうです。
繊細でおとなしい永明と勝気な梅梅。
上手く行かない可能性もありました。

しかし、さすが温厚な永明。
気が立っている梅梅に
威嚇されても、強く突き戻されても
諦めずに近づき、根気よく優しく触れる。
そうして、永明は優しく梅梅に寄り添い
9月13日無事交配にこぎつけたのです。

ところが、ここで困った問題が・・・。
梅梅の出産は12月。
冬の出産は世界でも例がないのだそうです。
パンダの赤ちゃんは体毛がなく体温調整が出来ません。
冬の出産は赤ちゃんにとって、とても危険なのです。

アドベンチャーワールドでは
急いで床暖房や加湿などの対策を整え
12月17日、無事、雄浜が誕生しました。
梅梅は身体が冷えないよう一生懸命なめたそうです。
一か月後、全身に毛が生えてきた雄浜。
もう大丈夫です。

2年後の2003年9月、順調に交配に成功し
双子の隆浜・秋浜が誕生。

通常パンダは双子で生まれると
元気な一頭だけを選び育てる習性があります。
当然、片方は死ぬことがほとんどです。
動物園など、飼育下の双子の場合は
2頭とも生かすことを目指します。
母親が抱かない一頭に人工ミルクを与え
飼育員の手で育てるのです。
しかし、生育には母乳が必要なので
どちらの子にも母乳を飲ませるために
母に好物のはちみつを与えて
母が夢中になって舐めている隙に
赤ちゃんをすり替えるという方法を使います。

映像見ましたが、母ちゃん、気づかないのが
ちょっと間抜けで、ほのぼのしました。
いや、ホントは気づいているのかも。
そこは、日頃のスタッフとの信頼関係かな。

で、もともと母乳の量も多く質が良かった梅梅。
なんと、生まれた双子に同時に乳を飲ませたのです。
これは、世界でも前例がない行動。
中国の成都担当者に相談すると
「育てられないから一頭取り上げて交代で・・」
というアドバイスが返ってきました。

でも梅梅はしっかり育てているように見えたので
梅梅の母性の強さを信じたスタッフは
梅梅と2頭をそのままにしたのです。
梅梅はちゃんと双子を育てあげました。

梅梅は繁殖を軌道に乗せてくれたパンダで
スタッフは、今でもとても感謝しているそうです。
子どもにはとても優しいが、人間には非常に厳しく
「近くに寄るな」という感じだったとか。
だからこそ双子を育てられたのでしょう、と
感想を述べられていました。

それからも梅梅は、幸浜・明浜愛浜(双子)
3頭の子どもを産みましたが
2008年10月、14歳(人間なら40歳)の時
腸閉塞で死亡してしまいました。

新たに永明のパートナーに選ばれたのが
7歳になっていた良浜でした。
これまた勝気で短気な良浜を
永明が優しく誘導し、交配に成功します。

2008年9月
良浜は初産で、双子「梅浜・永浜」を出産。
でも、ただ眺めるだけで抱きあげようとしない。
ようやく抱いてもどうしたらいいかわからず
赤ちゃんを、乳に持っていくことが出来ない。
助けを求めるようにスタッフを見ていたという良浜。

それでも、子育ては少しづつ軌道に乗りました。
次の出産では「海浜・陽浜」が
鳴き声を上げた瞬間に抱き上げました。

「優浜」「桜浜・桃浜」「結浜」を次々に出産。

そして現在の末っ子、彩浜が
2018年8月に誕生します。
ところが、彩浜の体重は75g。
通常の半分の大きさです。
呼吸も心音も微弱で
スタッフは「死んだ」と思ったそうです。
状態が落ち着いても
小さい彩浜は自力で母乳が飲めません。
母乳は抱いている時にしか出ないので
抱かせている間に飼育員が搾乳します。
そして再び赤ちゃんを連れ戻して
搾乳を注射器で飲ませました。


ところが、良浜は
赤ちゃんを取り上げられたことで
「自分の子供を返せ」
と興奮し、立ち上がって騒ぎます。

このままだと、精神的に不安定になって
母乳が出なくなったり
子どもに興味がなくなって子育てを拒否したり
困ったことになるのではないかと
スタッフの心配は尽きませんでした。
でも、体重が増えた彩浜を戻すと
良浜は優しく抱き上げ、
彩浜も自力で母乳を飲み始め
その後も順調に育っていきました。


「初産だったら育っていないだろう」
と、しみじみ話されていました。


(アドベンチャーワールド ギャラリーより)

アドベンチャーワールドで生まれたパンダ達。
すでに11頭は中国に渡っていきました。
繁殖にも成功し、孫のいるパンダもいます。

中でも、2004年6月に中国に渡った雄浜は
アドベンチャーワールドから旅立った初めてのパンダ。
梅梅とスタッフが双子の世話にかかりきりになった時
赤ちゃん返りをした甘えん坊でした。

その梅梅の長男雄浜は、現在15頭の父になっています。
性格が優しいところが永明にそっくりだそうで
雄浜の子供たちはカナダやデンマークに渡っています。

「浜家」の血を引くパンダは
今や、世界で41頭にもなってるのだそうです。

今回の企画で、若いスタッフが
アドベンチャーワールドのパンダ繁殖の歴史に触れて
「先輩方の苦労など 
 知らなかったことがたくさん。
 歴史があって今がある。
 パンダと周りの人々の力が
 あってこその今だと思います」
と話されていました。

パンダの繁殖では日本一の
南紀白浜アドベンチャーワールド。
隣町の施設でありながら
知らないことばかりでしたが
パンダの歴史を知ることが出来て
もっと身近に感じました。

久しぶりに遊びに行きたくなりました。

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