「復活の日」

TVドラマで放映されていた『日本沈没』
原作者は、小松左京さん。
星新一さん、筒井康隆さんと共に
日本のSF御三家と称される方です。
星さんはショートショートの神様と言われ
筒井さんはナンセンス小説が魅力的で
どちらも大変面白く
高校生の頃、夢中で読みました。

その小松さんの小説に1964年に発表された
「復活の日」という作品があります。
1980年には草刈正雄さん主演で
映画化されています。
（小説とは少し内容が違います）

物語のあらすじです。
舞台は第二次世界大戦後の東西冷戦下。
東側諸国（ソビエト連邦を盟主とする共産・社会主義陣営）
西側諸国（アメリカ合衆国を盟主とする資本・自由主義陣営）
の、対立構造の時代です。
米ソの直接武力衝突こそないものの
世界では両国が介入する戦争が続いていました。
キューバ危機という
核戦争寸前の状況もありました。
まだ東西ドイツ統一も
ソビエト連邦の崩壊も起きていません。

核兵器、生物兵器、化学兵器を合わせて
大量破壊兵器と呼ばれますが
極秘で開発されていた強力な新型ウイルスが
あろうことかスパイ(マフィア？)によって
奪われて、しかも飛行機事故で拡散。
瞬く間に全世界へと広がっていきます。
パンデミックによる都市封鎖や医療崩壊は
まるで現在の新型コロナ禍の予言のようです。

パンデミックが起こったあとの暴動や略奪
お祓いにすがる姿、死体の山を焼く自衛隊
もはや無意味な政治的駆け引き
世界が滅びる時でさえも
国家や民族間の感情で言い争う人々
SFという非現実の世界でありながら
非常にリアリティをもって描かれています。
（書かれたのは58年も前なのですが・・）

最終的に、現在の新型コロナウイルスとは
ケタ違いに壊滅的なウイルス感染によって
南極観測基地にいた
千人足らずの人々や生き物
原子力潜水艦の乗組員を除いて
人類をはじめとするすべての脊椎動物が
死に絶えてしまいます。

この小説が恐ろしいのは生物兵器によって
人類が滅亡に向かうだけでなく
それぞれの核保有国に
核ミサイル自動報復システムというのがあり
人類が死に絶えた後にシステムが稼働して
世界の多くの場所に核爆弾が落とされて
美しい地球が死の星となってしまうところです。

２月２４日に始まった
ロシアのウクライナ侵攻。
目の前に広がる兵器による破壊の映像。
人間の歴史は戦争の歴史。
報道されてない紛争や民族弾圧など
世界のどこかで常に争いは絶えませんが
21世紀の今になっても
力による問答無用の破壊と殺戮が
独立国に対してリアルに行われているのは
本当に信じがたい光景です。
これは明日の日本の姿かもしれません。

もしロシアが核攻撃を選択した場合
広島長崎の悲惨な被害が
もっとひどいレベルで
世界のあちこちで起きてしまいます。

コロナパンデミックが起こった時
「まさかこんなことになるとは
思っていなかった」・・・と
それまでの生活が当たり前で
いつまでも続くわけではなかったことに
改めて気づかされました。
このまま侵攻がエスカレートして
「まさか核戦争になるとは
思っていなかった」・・・
なんて事態が決して起こりませんように。
本当に恐ろしいです。

「歴史が示すように
理性のある人間だけが
権力を握るとは限らない」
映画の台詞がひしひしと胸に迫ります。