2017.08.16おかあさんのこと
更年期や閉経がある理由~その3~
「卵胞の加速度的減少&閉経」という
進化生物学的には、あきらかに不利益な現象。
それについて、今から、約20年前に
人類学者Hawkesが提唱したのが
「おばあちゃん仮説」です。
生物は、自分の遺伝子を残すことが最大の目的。
でも、もし自分自身が子供を残さなくても
自分に近い血縁者が子孫を増やせば
間接的に自分の遺伝子も残ることになります。
まだ、自分も若くて、
周りに自分の遺伝子を継ぐ
娘や息子が少ないタイミングでは
自分で繁殖を行います。
ところが、子供を産み
自分の周りに血縁者が十分増えたタイミングでは
自分自身は閉経して、繁殖をやめる代わりに
「子育てを手伝う」立場に立つことで
自分の遺伝子を残す確率を高くするのです。
子育てをする際に
「誰が生存していると、子供が生き延びやすいか」
を調査した結果、母親は当然として
「祖母」の存在が、子供の生存に
大きくかかわっていることがわかったそうです。
(Sear&Mace 2008)
また、祖母が生きていると
娘や息子の子供の数が増え、初産の年齢も下がるという
フィンランドの調査結果もあります。
ヒトの子育てにおいて「おばあちゃん」は
知識や経験を使って「子孫の繁殖を支援する」
最重要人物。
これが「おばあちゃん仮説」です。
「閉経」は単なる老化現象ではなく
「共同繁殖」して種を残すための「積極的生存戦略」
生殖年齢を過ぎたあとも非常に長い期間生きることで
進化上、利点があったと説明する理論です。
そういえば、1月に放送された
「共同養育」について触れられていました。
ヒトには700万年続けてきた
「共同養育」のための体のしくみがあって
みんなで助け合って子供を育てるという道を選んだからこそ
繁栄してきたにもかかわらず
現代の「孤独な育児環境」での子育てに
多くのママたちが苦しんでいるというのです。
社会のしくみや環境がどんどん変化しても
からだのしくみは昔のままなので
その変化に対応できていないのですね。
ちなみに、単行本も出ています。
さて、閉経といえばつきものなのが更年期。
いろいろな症状に悩まされる方は多いのですが
更年期は、なぜ存在するのでしょうか。
それにも”仮説”が提唱されています。