2020.01.20ゆる日記

彩浜・白浜パンダ一家のルーツ③

永明は繊細で
食べ物にこだわりの強いパンダ。

排気ガスの匂いがついていてもだめ。
海の近くで塩風の塩分がついていてもだめ。
匂ってみてやめる。
一口食べてやめる。

スタッフはいたるところに出向き
永明の好む竹を探して回りました。
そんなある日、山中で一つの竹を見つけます。
竹の枝が黄色みを帯びていて
葉は青々としており
繊維がしっかりしているその竹は
永明の好みにピッタリ合ったようです。
スタッフは
「きいくき」(黄茎)
と呼んで、園内にその竹を植え
いつでも食べられるようにしたそうです。
その他の竹もいろいろ取り揃えています。
おかげで永明は元気になっていきました。

今でも永明は食にうるさいので
特製ビスケットやミルクの調整も神経を使うそうです。
ほんとグルメだ。

さて、2000年
のちに「浜家のゴッドマザー」と呼ばれる
梅梅が、永明の新しいパートナーに決まります。
次は、母方のルーツを辿りましょう。

彩浜の祖母にあたる梅梅。
父は林楠(298)1985年 白水江で保護
母は蘇蘇(312)1986年 馬辺イ族自治県で保護

蘇蘇は波乱万丈な道を歩みました。
農村のジャガイモ畑に現れたところを
銃で射撃されてしまいます。
当時、クマや猪が畑を荒らすことが多く
農民が追い払おうとしたのです。

2か月後、田んぼにうずくまっていた
泥だらけの真っ黒な獣が捕獲されます。
衰弱し死にそうになっており
片目が傷つき失明していました。
それが、1986年に保護された蘇蘇です。

パンダの主食は竹。
竹は約60年に一度花が咲くそうです。
花が咲くと竹は全て枯れてしまうため
その年、食べるものがなくなりました。

その上、山林を切り開いて
高速道路建設が盛んに行われていたので
移動しながら竹を求めるパンダは
高速道路に阻まれ
新しい竹林を探すことが出来なかったのです。
結果、100頭以上のパンダが餓死したそうです。

エサを求めて
人里に下りざるを得なかった蘇蘇。
成都動物園に保護されたあと
手厚い手当てを受け一命を取り留めます。
ところがある日。
身体検査のために麻酔を打った際
心肺停止の状態になってしまいました。
3時間の心臓マッサージと人工呼吸で
奇蹟的に蘇蘇は生き返りました。
(続けたスタッフもすごい)

2度も命の危機を乗り越えた生命力の強いパンダとして
蘇蘇の回復治療の様子が獣医師学会で報告されるくらい
稀有な出来事でした。
中国語と日本語では
意味が違うかもしれませんが
名前が「蘇」=「よみがえる」ですからね。
この出来事をきっかけにした命名ではなく
もともと名前が「蘇蘇」だったとしたら
感慨深いものがありますね。

その後、1988年成都パンダ基地で
推定5歳の蘇蘇は初産に望みました。
そして1994年に蘇蘇の5番目の次女として
誕生したのが梅梅です。

蘇蘇は34歳まで生き抜き
成都パンダ基地最高齢となりました。
2017年、人間でいえば100歳の大往生でした。

さて、梅梅はかなり勝気な性分で
その分、子育てが上手い母親でした。
母の蘇蘇に似て、非常に母性が強く
赤ちゃんの喉が渇くと抱き上げて
自分の唾液を飲ませたそうです。

林さんは、子育て上手な梅梅を見て
「ぜひ梅梅を貸し出して欲しい」
と、中国側に希望します。
しかし、当時はまだ
中国にも良いメスが多くはない時期で
「わざわざ優秀なメスを出すことはない」
という声が大きかったそうです。

この時、成都パンダ繁殖研究基地の
副主任だった張志和さんが
「プロジェクトを成功させるには
 あえて良いメスを送ることが
 中国と日本が協力する上でとても大切」
と、上層部を説得。
もし繁殖が失敗した場合に
責任を負うプレッシャーを感じながらも
梅梅を白浜に行かせるよう決定してくれたのです。

そして、2000年7月7日
梅梅が南紀白浜空港に到着。


リンゴあげたらパクパク食べ
それを見たスタッフは
「何と肝の据わったパンダだ」
とびっくりしたそうです。

実は、梅梅は日本に出発前
中国で人工授精を受けていました。
発情のチャンスは少ないので
妊娠の機会を逃すわけにはいきません。

そして2000年9月6日
誕生したのが、彩浜の母、良浜です。
白浜で生まれた初めてのパンダでした。
もちろん永明とは血は繋がっていません。

繁殖が難しいパンダにあって
自然交配でどんどん命を育む
「浜家」の歴史は、ここからスタートします。

子育て上手な梅梅。
梅梅が、まだ小さい赤ちゃんを咥えて
口の中で回すのを見て
「噛み殺してしまわないか」と心配したスタッフ。
でも、スタッフの熊川さんが赤ちゃんの様子を見ていると
回されるうちに赤ちゃんがストンと眠るのを発見。
それは、梅梅が編み出した
赤ちゃんをあやす行動だったのです。
スタッフはそれを
「グルグル」
と名付けて見守りました。

Page Top 診療予約・お問い合わせ